コスモスカイオーケストラ 楽曲探訪 第1回 「再臨:片翼の天使」

もょ響以来の久々の楽曲探訪ですけど、10月2日のコンサートで取り上げる楽曲について、個人的に考察してみようと思います。

第1回は、いきなりコンサート目玉の「再臨:片翼の天使」。
PS 用ゲーム「FINAL FANTASY VII」では、有能なソルジャーであり、英雄であり、そして巨悪として描かれた「セフィロス」のテーマ曲・戦闘曲として「片翼の天使」が登場しました。あの当時、PS で遊んでたら急に合唱が聴こえてきたことで相当な驚きがありました。そういう目新しさとしての印象も強く、何よりあの緊迫したイントロと異様な熱狂をもったテーマは、忘れることのできない曲になったと思います。FF シリーズの中では、「プレリュード」、「ファイナルファンタジーのテーマ」、「反乱軍のテーマ」(II)、「愛のテーマ」(IV)、「ビッグブリッヂの死闘」(V)、「マリアとドラクゥ」(VI)、「ザナルカンドにて」(X)に並ぶ名曲じゃないでしょうか。並びすぎっていう意見もありますけども。(異論は認める)

そんな FFVII の 2年後の世界を描いた映像作品「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」で再び現れたセフィロスのテーマ曲が、この「再臨:片翼の天使」です。

自らの「思念体」であるカダージュ、ヤズー、ロッズらによって蘇ったセフィロスは、主人公であるクラウドたちの大切な人や世界を破壊し、ついにクラウドと再戦することになりますが、そのときに再度登場した「片翼の天使」のアレンジのすごさったらなかった!あほみたいにかっこいい!

さて、「無印」と「再臨」で違うところというと、まずその編成ですね。フル編成のオーケストラと混声合唱はもちろんのこと、ドラム、ギター、ベース、キーボードのバンドも一緒に演奏するド派手な編曲になっています。

実際にこれをやってみると、特に音量バランスの面ですごく難しいものがあります。バンドはとにかくフルパワーで演奏しますから、オーケストラ全体でも音圧的に勝てるかどうか。ましてや合唱は、はかなくかき消されてしまうのではないかっていう感じです。もうこれ、コンサートでやるなら合唱隊にもマイク必須!

もうひとつ大きく違うのは、合唱の歌詞。

「無印」も「再臨」もラテン語の歌詞ですが、「無印」は C.オルフのカンタータでおなじみの「カルミナ・ブラーナ」の歌詞から引用されたもので構成されていました。それを、「再臨」の際に改めてラテン語作詞(日本語からの訳詞)しており、より直接的かつ明確にセフィロスへの同調と肯定、そこから来る畏怖を歌うものになりました。

ここで、少し「再臨」の歌詞の日本語詩を引用させていただきます。

思い出の中に止まる事はない
烈しき怒りと 苦き思いを
心無く おぞましき運命
来よ 来よ 愛しの人よ
さあ ここに来て 私に再び死を与えよ

死を誘いし者
破壊の罪に生まれし子
その名を口にするなかれ
彼は再び降りてくる
セフィロス
セフィロス

「死」をもたらすセフィロスを受け入れながらも恐れを抱いて歌う今回の「再臨」、その歌詞世界の語り部となる合唱のみなさんにも、普段の合唱経験ではなかなか得られないような新しい気持ちで臨まれるものと思います。合唱指導の際にも、メンバーのみなさんとともに、合唱人としてのセフィロスとの対峙についてあれこれ考えてみました。あえて安い表現で言うならば、合唱のみんながセフィロスのことを好きすぎて、「ああ、もうどうにでもして!あなたのもたらす死でもなんでも受け入れるから!」というようなテンション、恐怖の吟味、そして心酔の中からも最後に救われるような気持ち。そういう複雑な心境を歌に乗せて表現できればうれしいです。

さて、実は今回演奏する「片翼の天使」は、単に「再臨」というだけでなく、2006年 の FINAL FANTASY コンサート「VOICES music from FINAL FANTASY」で演奏されたライブバージョンで臨みます。通常の「再臨」と比べて、ちょっとだけスペシャルでスリリングな編曲がされているものです。

当時「VOICES」のコンサートを聴きに行き、大変感激したのを覚えています。コンサートのアンコールで演奏されたのち、さらにボーナスアンコールとして演奏してくれたくらいの熱狂がありました。よく覚えています。まさかその 4年後に、自分の手でこの音楽を作っていける幸運に恵まれるなんて、これっぽっちも思っていませんでした。人生ってこういうところが面白い。

今回演奏するコスモスカイオーケストラ、合唱のコール・クリスタル・マナには、この曲に対する強い愛情と情熱があります。俺個人としても、「VOICES」で指揮をしたアーニー・ロス氏に負ける気はさらさらないです。「グラミー賞受賞者」ってこと以外、いまいち詳細な情報が出てこないアーニーさんにもできれば聴いてほしい我々の「再臨」。コンサートまでの残り少ない練習期間で、ギリギリまで我々流の音楽を磨いていきたいです。