楽曲探訪 第3回「勇者の挑戦」


さあ、楽曲探訪第3回は、ドラゴンクエストIII から、ラスボス・魔王ゾーマとの死闘を描く勇者の挑戦を取り上げます。


交響組曲版では、通常の戦闘 BGM「戦闘のテーマ」と、物語終盤でアルフガルドを旅するときの BGM「アレフガルドにて」に続いて演奏されるメドレーに組み込まれています。
交響組曲版のファンの方は、「アレフガルドにて」の印象的なハープのソロの直後、堰を切ったように始まる「勇者の挑戦」の冒頭の強烈イントロに、何度もゾクゾクしたのではないでしょうか。


この曲には、大きくとらえると 3回の繰り返しがあります。以前の練習レポートの中で、「ライトモティーフ」の話が上がりましたが、このライトモティーフから発展したテーマが、堂々たる金管合奏で繰り返し演奏されます。


※ 余談ですが、このライトモティーフの始まりは、たぶん「アレフガルドにて」(III)、つまりさらにルーツを辿ると「広野を行く」(I)ではないかと思っています。そう考えると、ロト伝説の着地点を見定めたこの III の戦闘の曲作り、本当に素晴らしいものだと思います!


ゲーム音楽の戦闘音楽というと、表面的には「勇壮」「英雄的」というイメージで考えられがちですが、もょ響の「勇者の挑戦」では、「最初から英雄的であるなかれ」の観点で進めています。
物語の途中まで存在さえも知らなかった魔王・ゾーマと初めて対峙したとき、ゾーマのおぞましい力を前にした勇者たちが、どのような気持ちでいたのでしょうか。少なからず、「畏怖」の感情はあったはずです。しかし、体勢を立て直しながらその畏怖を克服し、なんとか反撃のチャンスを見出そうとしたのだと考えています。
せっかくこのテーマを 3回も繰り返すのだから、そういうストーリー性を感じながら、この恐ろしくも鮮やかな最後の戦いを描いてみようと、僕は思っています。


曲の序盤はゾーマの暴力が圧倒する様子を描きたいのですが、では勇者たちはどこで勝機を見出し、反撃に出るのでしょうか。交響組曲版をご存知の方は、どうぞ思い浮かべてみてください………テーマを 2回繰り返したあと、フッと風向きや勢いが変わるところ。
トランペット、弦楽器、金管楽器がそれぞれ呼応するのを聴きながら、勇者の剣の一閃やゾーマの焦燥を感じたりしませんか?もしかしたら、ここで「ひかりのたま」を使ったのかも知れませんよね!(「いや、最初に使えよ」とか夢のないことは言わないで><)(← こういうこと言ってると、練習中にまた「SFC版は"ひかりのたま"を使ってからこの曲が始まるんだけど」とかつっこまれるんです)
ロトのテーマの断片が飛び出すところなんか、本当にわくわくします。ここからずっと勇者様のターン!


どんな音楽でもそうですが、何回も同じテーマをただ繰り返しているだけだと、聴いているほうが退屈してしまうことがあります。しかし、この曲における 3回の繰り返しは、そういう戦いの感情や形勢が変わっていく様子を感じさせるものかも知れませんよね。


この曲の最後、ゾーマの断末魔が聴こえ、ついに巨悪を打ち倒したあとに待っている曲は……そう、もうアレしかありません!
自分も含めた「ロト三部作」世代のお客様が、死闘の興奮からハッピーエンドの気分に自然に移れるよう、これからももょ響は精一杯努力していきます!



※ 「もょ響アーカイブ」は、2009年に「もょもと交響楽団 活動報告」ブログで投稿したものを、一部アーカイブとして整合性がとれるよう編集して掲載します。