音、楽しめましたか?


みなさま、こんにちは。
もょもと交響楽団 音楽監督・指揮者の田中です。


8月16日のわたくしどものコンサートは、たくさんの方々に支えられ、無事に終了いたしました。ご来場くださいましたみなさま、応援をしてくださったみなさま、改めて深く感謝を申し上げます。


実は当日、ドラゴンクエストIX のキャラクターにメッセージを添えておき、すれ違い通信を入れっぱなしでロビー周辺をうろついたり、本番中に DS 本体を指揮者用譜面台に忍ばせておいたのですが、みなさまの DS に僕のキャラ(純真美少年ニック)がお邪魔していないでしょうか?開場前のロビーで、リッカの宿屋を開きながら「わー、指揮者だ!」って声を上げてくださった方がいらっしゃったのですが、なんだか恥ずかしくてすぐに物陰で隠れてしまいました。すみません!おみやげの宝の地図は、僕が大切に育て上げたムドーさんです。どうぞかまってやってください。


当日ご来場くださったみなさまにご記入いただきましたアンケートを、終演後の楽屋で一通り拝読いたしました。アンケートへのご協力、まことにありがとうございます。アンケートを読むにつれ、みなさまのドラゴンクエストとその音楽に対する愛情の深さ、そしてその音楽に挑戦するわたしたちに対する期待の大きさを強く感じました。


もょもと交響楽団」は今回のコンサートのための企画オーケストラですので、第1回のコンサートにして早くも解散コンサートという側面も持ち合わせていたのですが、「次回もやって!」というご意見は大変うれしいものです。ご自身のドラゴンクエストの思い出と重ねて音楽を聴いたという方、演奏についての温かいご指導をくださった方など、襟を正して読ませていただきました。本当にありがとうございます。


わたしたちは、この日をもって普通の男の子・女の子に戻りますが、ここで少し音楽監督としての立場からこれまでの活動を振り返ってみたいと思います。


今から 2年前にこのコンサートの企画を始めて、mixi のコミュニティで第1回の合奏イベント(非公開で内輪で演奏を楽しむだけ)を開催して以来、僕はずっと指揮台から参加メンバーの様子を見てきました。合奏イベント時代から、とにかく全員が楽しそうな表情で演奏を楽しんでいるのです。そりゃそうでしょう。今までCDを聴いているだけの大好きなドラゴンクエストの音楽を、実際に自分たちで演奏しているという夢のような体験をしているのですから。


その合奏イベントやコンサートに向けた練習の中で、指揮者として参加メンバーに対してできることってなんだろう?っていつも考えていました。
僕なりに特に努めてきたのは、以下の 2点です。


1. 今まで以上にドラゴンクエストの音楽を好きになってもらいたい!


ドラゴンクエスト大好きな指揮者」という立場から、音楽をより深く掘り下げて、聴きなれた音楽の中から新しい発見をし、それをメンバーと共有することで今まで以上にドラゴンクエストの音楽を好きになってもらいたいと思いました。ゲームの中でも、行きなれた街の中で L・R ボタンで視点を変えてみたら、ほらこんなところに「ちいさなメダル」が落ちてた!みたいな。ちょっとしたことだけど、なんかすごくうれしいじゃないですか。そういう感覚です。
メンバーのみなさんが、もょ響に参加してくれたことで「こんな新しいことを知った」っていう充実感が少しでもあるとうれしいのです。


2. アマチュアとして音楽を楽しむことを、いろんな角度から知ってほしい!


「アマチュアとして音楽を楽しむこと」って、何でしょうか?


マチュアのオーケストラや吹奏楽等に参加している人って、普段は学校・仕事・家庭等で忙しいのに、わざわざ時間を作って集まり、決して安くはない楽器を持ち寄って音楽を合奏をするという、言ってみれば「ちょっと面倒な趣味」の持ち主なんです。そうまでして参加してくれるみなさんに、何か少しでも心に積もる体験を提供できれば……と考えながら合奏練習をしてきました。


合奏音楽を目指す人には、人それぞれに様々な「経験」や「考え方」があり、またそれぞれに「正義」が存在します。参加する全員に等しく同じ満足を提供するというのは、大変難しいものです。ですから、今回の「もょもと交響楽団」においては、できるだけたくさんの人に「満足」と「新しく知る価値観」を提供できればと思ってきました。


まず、このオーケストラの団員を募集するにあたり、合奏経験を不問としたこと。とにかくドラゴンクエストの音楽への一途な愛情が、団員採用の第一条件。経験や技術は二の次としました。足りない経験や技術は、仲間同士でフォローし合い、助言や提案を通じて後から伸ばしていければいいのです。実際、なかなかうまく演奏できない箇所もありました。でも、できないことに嘆くのではなく、どう工夫すればコンサート本番までにうまく演奏できうようになるのか、みんなで知恵を絞ればいいと思うんです。「おお ○○よ えんそうできないとはなさけない」なんて、僕は言いません。失敗を責めちゃいけない、失敗を恐れちゃいけない。失敗していいのが練習です。僕だって相当指揮を振り間違えたり、音を聴き間違えたり、聴き逃したりします。失敗することで、自分のことがまたひとつ新しくわかる気がしませんか?


そして、特に合宿や合宿後の合奏練習で経験したような、練習の厳しさの体験。ただ「自分たちで演奏した」という自己満足で終わるのではなく、コンサートを開催する以上、たとえ入場無料であっても、時間を割き、移動費の負担を強い、労力をもって会場に来てくださるお客様がいらっしゃるのです。ですから、質の良い演奏も目指さなくてはなりません。そのために、個人やパート内の技術を磨き、幅広い表現力をもってお客様に音楽を提供していくことも、我々の務めなのです。


また、演奏技術の向上は、お客様に対する満足を提供するだけでなく、音楽人としての自分自身の成長や達成感にも繋がります。ときには練習をつらく感じることもありますが、つらく感じる練習だけに縛られるのではなく、その先にあるアンサンブル達成の喜びや、できなかったことができるようになった喜びなど、大きな大きな達成感が待っているのです。この達成感を感じるまでがめちゃくちゃ長いのも、こういう合奏音楽を趣味としている人たちの特徴でもありますね。よっぽどのドM じゃないと務まらないのかも知れません。


もょ響のコンマスが、このオケには「人の和」があると言いました。まさにそうだと思います。人の和が、音楽の和を作るのだと思います。
互いの価値観を認め、尊重し合うこと。音楽そのものをゴールにしてはいけない。せっかく大好きな音楽をやってるんだもの。それも、とびきり面倒な合奏音楽を。人と触れ合ったり溶け合ったりするのって、楽しくて面白いでしょ?音楽人として、音楽を突き詰めるのも大変素晴らしいことです。でも、せっかくアマチュアなんだもの。音楽も、そのほかのことも、めいっぱい楽しんで、おいしいお肉をいっぱい食べて、悔いなく死にたい!と僕は思います。


みなさまの中にも、趣味で音楽演奏を楽しんでいらっしゃる方は多いと思います。
今、どうですか?楽しんで音楽できていますか?つらく感じてはいませんか?
みなさまも、人の和を大切にしながら、これからますます楽しく充実した音楽生活が送れますよう祈ります。


長々と読んでくださいまして、ありがとうございました。
今回のこの公演を通じ、少しでも多くのみなさまにわたしたちの想いが届けばうれしいです。


また一緒に冒険の旅に出ましょう!ありがとうございました!



もょもと交響楽団 音楽監督・指揮者  田中 亮



※ 「もょ響アーカイブ」は、2009年に「もょもと交響楽団 活動報告」ブログで投稿したものを、一部アーカイブとして整合性がとれるよう編集して掲載します。