佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2010 「キャンディード」

レナード・バーンスタインが、その生涯をかけてこだわり続けた作品「キャンディード」。一応「オペラ」の枠で整理されることの多い作品ですけど、ミュージカル的な要素も多くて、誰にでも楽しめる作品です。

いや、どうだろう、「誰にでも」ってのはちょっと言い過ぎかも知れないです。その理由はのちほど。
この「キャンディード」、2年ほど前にテレビでやってたのを観てすごく面白かった(ゲラゲラ笑ったりします)ので、チケットを取ったときから大変楽しみにしていました。すごくポジティブなメッセージが込められたコメディなんだけど、最後はなんかもうものすごく感動してしまう作品です。序曲だけはすごく有名ですね。「題名のない音楽会」のテーマ音楽としても親しみ深いものです。

250年前の小説を原作としていますが、この「オペラ」ではバーンスタイン独特のユーモアがてんこ盛りなので、観る人を少し選ぶかも知れません。新しく希望に満ちた新大陸・アメリカを主な舞台として、人をやたら殺したり、やたら生き返ったり、そしてセックスや現代の政治に関する皮肉やジョークもたくさん。(特に、絞首刑の場面はびっくり。ほんとに首を吊ってるかのように見せる装置でした。よく見ると背中を吊ってるんだけども) でもそれは人の命をもてあそぶような表現ではなく、セックスや権力に溺れる人の愚かしさを題材のひとつとしながら、人生において幾多の困難を乗り越え、自分の価値観を確かにして自分の畑を耕していこうよ!という強いメッセージが込められているものです。

舞台演出も面白くて、ステージが全部まるまるテレビの枠に収まっている作りをしていました。観客はずっとテレビの番組を観ているかのように観劇するのですけど、最後にキャストが全員そのテレビの枠を出て合唱するっていうのが、誰かに決められた価値観を打ち破って、まさにいま自分の考えをしっかり持って生きていこうとする意志を表しているように感じられたのも、印象深いものでした。

フィナーレでは、世界の貧困や難民、環境破壊の問題を暗示する映像を流しながらの合唱。映像は、そんな様々な問題を抱える現代の地球が、この作品の原作者・ヴォルテールの肖像の瞳に収まっていって幕となりました。まさにこの演出どおりで、フランスの作家・ヴォルテールが250年前に「現代劇」として書きあげた「カンディード」(原作)が、250年経過した今でも人間は同じような問題を抱えて苦しみ、それを乗り越える力をもっていることを示すもので、大変感動的。拍手が全然鳴りやまなかったほど、本当に素晴らしい公演でした。

相当大変だとは思うけど、いつか自分でもこの作品に取り組みたいなーって強く思うものでした。

夢はやり方次第でいくらでもかなえていくことはできるもの。(って俺は確信しとる) 劇中でキャンディードが気付いたように、諦めずにしっかり考え、自分の畑を耕して歩み続けて実現させていければいいなーと思います。