コスモスカイオーケストラ 楽曲探訪 第4回 「Xenogears 〜 for ensemble's section 〜」


第4回は、1998年発売の PS1 用ゲーム「ゼノギアス」の名曲の数々をメドレーにしたこの曲。

ゼノギアスは、当時のスクウェアソフトが、これまで王道ファンタジーRPGとして展開してきた「FINAL FANTASY」シリーズや「聖剣伝説」シリーズとは一線を画す新しいゲームとして発売し、話題になったゲームでした。
生身の人間でのバトルももちろんのこと、「ギア」と呼ばれる人型の巨大兵器に登場して戦うなど、状況に応じてキャラやギアの特性を考えながら進めるゲームなのですけど、とにかくシナリオが濃密ですごくいい!あと、エンカウント率高すぎ!やたら遭遇する敵にちょっとイライラしつつも、それでもそのストーリーの深さにどんどん引き込まれていく感じです。一度プレイした人なら覚えていると思うのですけど、特に食肉加工工場のシーンはちょっとしたトラウマじゃないですかね……いま思いだしても……うううううう><

さて、今もなお根強い人気を誇るこのゼノギアス。その名曲の数々を作りだしたのは、既に1995年の「クロノ・トリガー」で人気・実力ともに不動の地位を得た光田康典さん。ファンの期待に添うに十分な素晴らしい楽曲群を残してくださいました。

今回のコンサートで取り上げる楽曲の中から、いくつかコメントしたいと思います。

「遠い約束」

オルゴールのやさしい音で奏でられる、ゲーム中でもひときわ印象的な楽曲です。主人公フェイとヒロインのエリィ、そして500年という遥か遠い昔のラカンとソフィアの記憶。そんな素敵で儚げなつながりを演出するこの曲を、オーケストラではフルートなどの木管楽器を中心としたアンサンブルでやさしく演奏します。

「おらが村が世界一」

フェイが暮らした村・ラハンのBGM。原曲ではフィドル(ヴァイオリン)のようなソロが聴かれるのですが、オーケストラではトランペットのソロなど金管楽器を中心にして、楽しげな村の宴の様子を描きます。テンポの速い 3拍子を基本にした舞曲風の楽曲ですが、時々 2拍子が混ざるというトリックも。でも慣れるとすごく気持ちのいい変拍子です。
この曲も結構好きなんだけど、物語の序盤でしか堪能できないんですよね。ラハン壊滅後はちっとも聴く機会がない!

「死の舞踏」

通常戦闘BGM。7拍子の鮮烈な序奏に導かれてからテーマに入るのですけど、メロディよりもその強烈なリズムのほうが印象に残っているかも知れませんね。
我々のように、本来ゲーム機や事前録音のシンセサイザー等によって自動演奏されるゲームの音楽を生楽器で演奏する際には、独特の工夫が必要になります。この曲もまさにそういうもののひとつで、ゲーム音源のまま忠実にコピーするように演奏すると、中だるみするようなものすごくカッコ悪い音楽になってしまいます。生楽器ならではの音の工夫をこらすことで、「生楽器で演奏する『死の舞踏』」という新しいかたちが生まれてくるのです。もしゼノギアスの音楽に詳しい人がいたら、わたしたちの「音の処理」がサントラの音とどういう風に違うのかを比べてみるのも面白いかも知れませんね。

「飛翔」

個人的には、この曲こそが至高。ゲーム中、こんなにも直接素手で涙腺を撫で上げる曲も珍しいと思うのです。絶望的な状況に追いこまれた主人公たちに、一筋の逆転の光が見え、それがみるみる大きくなり、あまりに大きな希望を与えてくれる……。特に新ギアの「ゼプツェン」の発進シーンには一番合うと思います。最近久しぶりに PSPPlayStation Store でダウンロード購入できますよ!)でこのゲームを遊んだのですけど、この曲が流れるシーンではちゃんと座り直し、姿勢を正してそのシーンに向き合ったものです。
オーケストラでは、前進的で躍動感のあるリズムが現れ、後に現れるテーマの断片を金管楽器が演奏し、いよいよその希望に満ちたテーマを弦楽器を中心にして伸びやかに歌いあげるのです。

このほかにも、メドレーの中にはゼノギアスの名曲がいろいろ登場します。名シーンを思い浮かべながら、懐かしんで聴いてくださるとうれしいです。