コスモスカイオーケストラ 第3回定期演奏会

コスモスカイオーケストラ第3回定期演奏会に来てくださったみなさま、本当にありがとうございました。
mixi に書いたこととかぶることも多いですが、改めてご挨拶と振り返りをさせていただきます。

ホールが1500名収容のところ、1400名弱のお客様に来ていただけました。
マチュアのオーケストラでこれだけの人数のお客様を集められるというのは、大変稀有なことです。みなさまに感謝するとともに、改めてこのオーケストラに対する人気と期待の高さを感じます。

そんなコスモスカイオーケストラ、今回の定演を担当させていただくことが決まったのは、わずか 4か月前のことでした。
2008年12月の東京オペラ協会公演「オペラ第九交響曲」の副指揮を担当していた頃に参加されていたヴァイオリニストの青年(好青年)に、「10月のコンサートを振ってくれないか」と声をかけていただいたのです。
あの頃のことをしっかり覚えていてくださったことと、その後もょもと交響楽団の指揮というゲーム音楽の演奏活動の実績も評価してくださっていたことに深く感謝です。

練習期間はたった 4ヶ月でしたが、今にして思うと 4ヶ月以上の濃密な練習時間一緒に過ごしてきたようにも思えます。

とにかく団員のみなさんが楽しく音楽に取り組んでいる楽団でしたから、最初はどっきどきで練習に出ていたわけですけど、そんな中、気をつけてきたことは本質的には以下の 2点です。

  • 完全に余所者の田中という指揮者が来ることで、団員がこれまで築いてきた文化を壊さないようにすること
  • 完全に余所者の田中という指揮者が来ることで、新しい音楽の価値観を提供すること

それは、メンバーのみんなができるだけストレスなく練習ができる環境を維持することだったり、新しい表現力や演奏の工夫を掘り下げていくことだったりするわけですけど、この辺については、おそらく近いうちに楽団で今回の演奏会の振り返りをする機会があると思いますので、その機会にしっかりみなさまで評価を下していただければと思います。

それでは、当日のセットリスト的なサムシングですー。

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【 第1部 】

1. 愛のテーマ 〜 jazz ballade 〜 (FINAL FANTASY IV
2. Cosmosky Orchestra Screen Music Original
3. Romancing SaGa 3 Medley (ロマンシング・サガ3)
4. Beyond The Earth (ポップンミュージック
5. Konzert fur SaGa Flontier 2 Gemisch (サガ・フロンティア2)

【 休憩 : ロビーコンサート 】

6. CHRONO CROSS 〜 時の傷跡 〜 (クロノ・クロス

【 第2部 】

7. 風の追憶 〜 悠久の風伝説 〜 (FINAL FANTASY III
8. 功名が辻 メインテーマ (NHK大河ドラマ功名が辻」 )
9. 篤姫 メインテーマ (NHK大河ドラマ篤姫」 )
10. Leap the precipice (トラスティベルショパンの夢 〜 )
11. Suikoden for orchestra (幻想水滸伝II)
12. ホームタウン ドミナ (聖剣伝説 Legend of Mana
13. Xenogears 〜 for ensemble's section 〜 (ゼノギアス
14. 再臨:片翼の天使 - Advent: One-Winged Angel - Live version (FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN

【 アンコール 】

15. FINAL FANTASY メインテーマ (FINAL FANTASY VIII / VII )
16. World de Chocobo! (FINAL FANTASY シリーズ)

【 アンコール もういっちょ 】

17. Dearly Beloved (KINGDOM HEARTS II

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それぞれの曲の印象や感想は、聴きに来てくださったみなさんや演奏したメンバーの日記に譲るとしてですよ、今回指揮者として関わらせてもらった観点での感想をちょいちょい述べます。曲番号順でいくぞ!

1. 愛のテーマ 〜 jazz ballade 〜 (FINAL FANTASY IV
なんだこれすげえかっこいい。オッシャレー!シャレオツゥ!
ナレーションはもう一回ちゃんと落ち着いて聴きなおしたい!むしろ、原稿のまましっとりと音読したい。
あとですね、開演直前の「おにくせんせい〜〜〜〜!!!!」のお子様の声は、 俺 の 子 じ ゃ な い で す。だいたい、仮にそうだとしても、どこの子どもが父親のことをニックネームで呼ぶんだ。終演後のレセプションでこれについてはやたら訊かれました。ステージもどよめいたのですけど、お客様はもっと意味がわかんなかったですよね。そうです、私がおにく先生です。はっはっは。


2. Cosmosky Orchestra Screen Music Original
楽譜が初めて配られたときの初見演奏はグッダグダでしてね。でも、グッダグダながらも、それでも編曲の妙をすっごく感じました。
「CMを挟みながらいろんな番組を見ている感」があって面白かったです。
こういうメドレーは、拍子やテンポ、曲想がめまぐるしく変わりますから、演奏をまとめるのは大変です。
当日これを聴いた方、曲は全部わかりましたでしょうか?一応まとめてみるよ!

  1. Nostalgia / 久石譲 (「金曜ロードショー」テーマ曲)
  2. カーテンコール / 荻野清子 (映画「ザ・マジックアワー」から)
  3. seeds of life / 菅野よう子 (「コスモ石油」CM曲)
  4. 第三の男 / アントン・カラス (「YEBISU」CM曲)
  5. 「ロメオとジュリエット」組曲第2番から「モンタギュー家とキャプレット家」 / S.プロコフィエフ (「SoftBank」CM曲)
  6. 古畑任三郎」 オープニングテーマ / 本間勇輔 (ドラマ「古畑任三郎」から)
  7. Dear WOMAN / SMAP (「資生堂 TSUBAKI」CM曲)
  8. ゲバゲバ90分!」 オープニングテーマ (「のどごし生」CM曲)
  9. Oriental Wind / 久石譲 (「伊右衛門」CM曲)
  10. Rhythm And Police 〜 C.X. (映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」シリーズから)

コスモ石油」は楽団名にちなんで入れてますよね。
あとビールの曲が 2つも。そんだけビール好きなの。
個人的には「古畑」はやっぱ燃えます。これは本番直前までいろいろ調整しました。
ゲバゲバ90分!」は文句なく楽しい!
伊右衛門の曲でソロをとった横笛は、フルートではなく、韓国のチョッテという楽器です。こういう楽器が登場するのも、コスモの特色のひとつですね!
友達に言われて少し気付いたのですけど、「YEBISU」+「のどごし生」+「コスモ石油」+「踊る大捜査線」って、これ完全に飲酒運転逮捕セットですよね……


3. Romancing SaGa 3 Medley (ロマンシング・サガ3)
基本的に全部の曲にも言えることですけど、「生楽器でゲーム音楽を演奏することの工夫と創造」を一番取り入れたのはこれだったかも。
ロマサガ3 の音楽が持つ本質的な良さをよく考えて尊重しながら、テンポやアーティキュレーションを含め、「オーケストラで演奏するロマサガ3」のかたちを提案してきたつもり。
イトケン(作曲の伊藤賢治)のオケ殺しに徹底して新しい答えを提示していきつつも、四魔貴族は完全に踊らされた!!あの曲大好きすぎる!!


4. Beyond The Earth (ポップンミュージック
吹奏楽的にいうところの、ニュー・サウンズ・イン・ブラス的な楽しさがあっていい!
音量のバランスに最も苦心した曲のひとつだけど、「コスモでやるポップンミュージック」の一つの答えを出し切れたのではないかと。


5. Konzert fur SaGa Flontier 2 Gemisch (サガ・フロンティア2)
これはもう、アンサンブルソリストの演奏の素晴らしさと、マツさんの編曲の素晴らしさに尽きます。
ソリストのみんなの演奏がものすごくいきいきしていて、アンサンブルも重厚で色めきだっていてよかったです。
指揮者の位置は彼らに一番近く、会場の誰よりも贅沢な時間を過ごしたように思います。
マツさんの編曲は、既に編曲という枠を越えて、完全に新たな芸術創造であるようにも思いました。
協奏曲として、組曲として、とても堅牢で魅力溢れる構成であり、演奏はもちろんのこと、スコアの読み込みが本当に楽しかったのです。
これからゲーム音楽が文化として広く確立と浸透がされていこうとする中、こういう取り組みや挑戦は社会的にも大変価値のあるものだと思います。
こういうスコアを振れるということは、指揮者にとって言葉に表現しえない喜びと誇りがあります。長くなりましたけど、そのくらいすごいです。マツさんの存在を含め、これこそがコスモであると言えます。


6. CHRONO CROSS 〜 時の傷跡 〜 (クロノ・クロス
当日はお色直しで聴けなかったのですけど、名演であったことは間違いないでしょう。
こういう情熱的な曲想を演奏するのが得意であるのも、コスモの魅力のひとつ。


7. 風の追憶 〜 悠久の風伝説 〜 (FINAL FANTASY III
DS版の楽曲とはいえ、今回取り上げたゲーム音楽の中では最も古い時期のゲーム作品の楽曲でした。そういう意味で、あのステージに乗っていた最年長クラスの俺としては思い入れの深い曲。
特に後半の「水の巫女エリア」は初期の植松さんらしい美しいメロディで、できうる限り植松さんの魅力を引き出したく思い、ゲーム版とは少し違った息遣いで仕上げてみました。


8. 功名が辻 メインテーマ (NHK大河ドラマ功名が辻」 )
オーケストラとリズムマシンの斬新な融合が新鮮な印象のこのテーマ。
よくあんな複雑なリズムを刻めるなドラムー!ってのが最初の練習の印象。
キレ味とスピード感、そしてほんのり影を落とすメロディ。
ポイントはテンポの引き締めと緩みのコントラストだったと思うのですが、どうでしたでしょうかね……?
あと、拍子変わりすぎだこれ!どんだけ指揮者殺しなんだwwwww


9. 篤姫 メインテーマ (NHK大河ドラマ篤姫」 )
指揮棒なんか持ってられっかの曲。この手で、この指で、この場にある音楽を全部つかみたくなるような音楽。
Dr.コトー診療所」のサントラなどでも魅せる吉俣良さんの曲は、どこかで聴衆の手をふっと離すようなフレーズが多くあります。でもそのあとちゃんとまた暖かく手を握ってくれるような。そういう空気感がうまく出ていればいいのですけれども。
ゲーム音楽のことはわからないけど、うちの子が出演してるのでコンサートに来ました」っていう親御さん世代にも楽しんでいただけた曲ではないかと。いい選曲!


10. Leap the precipice (トラスティベルショパンの夢 〜 )
前の「篤姫」からアタッカ(切れ目なし)で突入したこの曲、このゲーム自体はあまり広く知られていないのですが、でも「こんなにも素晴らしい曲があるんだぜ!」ってことを広く知らしめるとても良い取り組みになったと思います。
作曲の桜庭統さんは、テイルズオブシリーズでも有名です。いい曲で当たり前なのです。
このクオリティでありながら、ボス戦闘曲じゃなくて通常戦闘曲だっていうからさらにすごい。
実際、終演後のロビーでごあいさつさせていただいた方にも、何名か「知らないゲームだったけど、これはものすごくよかった!」とご好評をいただけました。大成功だったと思います!


11. Suikoden for orchestra (幻想水滸伝II)
練習期間の割と後期に仕上がってきた編曲でしたので、練習する機会はあまりなかったものの、メドレーとして大変魅力のあるものでした。
オープニング曲で始まるのはある意味当然として、最後もオープニング曲で締めるあたりがさすが!あのオープニング良すぎるもの!
作曲の東野美紀さんは、30代以上の世代には「グラディウスの音楽の人」って言ったほうがわかりやすいかも。さすがのクオリティですね。


12. ホームタウン ドミナ (聖剣伝説 Legend of Mana
小編成のオーケストラでしっとり聴かせる小品。
小編成ならではの透明感が出るような、音的な過不足のない見事な編曲でした。
こういう小品をもっともっとレパートリーとして開拓していくといいようにも思いました。


13. Xenogears 〜 for ensemble's section 〜 (ゼノギアス
こういうの、コスモは絶対得意だよね!っていう曲。曲っていうかゲーム。
最初の「遠い約束」だけでまず泣ける。フルートとハープだけが鳴るあの音空間がなんとも。ラカンとソフィアの500年前の約束が、今フェイとエリィに引き継がれて紡がれていくのです。ああもう、書いてるだけで涙出る。
「紅蓮の騎士」「死の舞踏」等の人気の高い楽曲たちを経ながら、最後はお待ちかねの「飛翔」!この曲ものすごく好き!!
序奏で金管楽器がテーマの片鱗を力強く奏し、いよいよ弦楽器が希望に満ちたテーマをのびのびと演奏するというあの解放感。
主人公たちを絶望から救ったゼプツェンの登場シーンのように、あざやかにコンサート会場に広がるあの空気。
何度思い返してもいいものです。
え、チュチュの巨大化シーンも?なんのことがわかんないでチュ〜(ポピピュ〜)


14. 再臨:片翼の天使 - Advent: One-Winged Angel - Live version (FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
これだけは本当に自信を持って言えますけど、コスモのこの演奏こそが世界標準であるべきだと思います。
今回演奏したどの曲も、これまでに練習してきた力を発揮できたと思うのですけど、これは練習の成果がきちんと出たどころか、きっとこの先、コスモが音楽的にも活動的にもさらに大きく飛躍していく礎になる演奏成果だったと思います。
これは本当に胸を張って言える。植松さんの前でも言える。世界中の人に愛されたセフィロスが、今まさにこの演奏の中にいますと。今回の演奏会のテーマであった「愛」の結晶が、今ここで結実しましたよと。
お客様にも大変大きな拍手をいただくことができ、このホールで1400名近くのお客様と、我々100名近くのメンバーと一緒に、音楽の感動を分かち合うことができた瞬間です。
そういえば、合唱指導も久しぶりでなんだかドキドキしましたけど、ご協力くださったコール・クリスタル・マナのみなさん、本当にありがとうございました!
やっぱりこう、歌詞の発し方ひとつで音楽に命が宿っていくのっていいですね。
合唱の魅力の奥深さを改めて知った思いがしました。また一緒に演奏したいな!


15. FINAL FANTASY メインテーマ (FINAL FANTASY VIII / VII )
FF8FF7 の ED で使われたメインテーマががっちゃんこ。
これね、正直俺やばかった。何か堪え切れなくなるかと思ったのですよ、特に最初の弦楽合奏のところ。
FFメインテーマなんて、ファンからしたら国歌みたいなものですからね。
棒振ってる場合じゃないんです。胸に手を当てて聴き入りたいものなんです。あーほんとやばかった。
合唱もあいまって、とても感動的なアレンジでしたね。


16. World de Chocobo! (FINAL FANTASY シリーズ)
これも本番直前に上がってきたにしては恐ろしく難しいスコアwwwww
でもこれは今回取り上げた中でも最高級の名編曲ではなかったかと思います。
いろんなスタイルでチョコボのテーマが現れたり、あるいは変奏されたり。
何食ったらこんなにアイディアがあふれてくるのでしょう。
だいたい、世界中どこ探してもチョコボセフィロスをくっつける人なんていないよ!!wwwwww
スコアが家に届けられた日もひとりでゲラゲラ笑ったのですけど、お客さんの度肝も抜いたのではないかと思います。


17. Dearly Beloved (KINGDOM HEARTS II
これも本番では聴けずに残念!(ロビーでごあいさつタイムだった)
でもこれも名演でしたでしょう。コスモは個人の表現力も豊かですから、こういうアンサンブルも実にいいものです。


改めてですが、聴きに来てくださったみなさん、会場には来れなかったけど応援してくださったみなさん、コスモスカイのみなさん、コール・クリスタル・マナのみなさん、ステージや会場の整理・管理をしてくださったスタッフのみなさん、MCやPAで演奏を盛り上げてくれたみなさん、そのほかにもコンサートの成功をしっかり支えてくださったスタッフのみなさん、本当にありがとうございました。
大変幸せな時間を過ごすことができました。

コスモスカイオーケストラの次回第4回定期演奏会は、2012年春の予定だそうです。